絶望的で救われない、見たあとに落ち込んでしまうような胸糞映画。
気分が暗くなるのは嫌なはずなのに、なぜか癖になってしまいますよね……。
今回は、見たことを後悔してしまうほどの最強の胸糞映画を18個紹介します!
サブスクで見られるリンクも貼っておくので、気になったらぜひ見てみてくださいね!
作品選定の基準
実際に見た作品から、特にダメージが大きかった映画
他のサイトではあまり紹介されていない映画
サブスクで見られる映画に限定
単なるホラー映画は除外
おすすめできない最強の胸糞映画【邦画編】
「見返りが欲しくてやったわけじゃないから」って言ったことないですか?【神は見返りを求める】
イベント会社に勤めるお人好しなおじさん・田母神(たもがみ)は、数合わせで参加した合コンで底辺YouTuberのゆりちゃんと出会います。
田母神は、伸び悩むゆりちゃんのために小道具を貸したり、ロケ地まで車を出したり、仕事の休憩時間に動画編集したり……。
チャンネルはなかなか伸びませんが、2人で楽しく動画づくりをしていました。
「見返りが欲しくてやってるわけじゃないから」
人気YouTuberとコラボしたことで人気が出始めたゆりちゃんは、やがて田母神を「都合のいい雑用係」として扱うようになってしまいます。
トラブルが重なり極限まで追い詰められた田母神は、徐々におかしくなっていってしまいます。
恩をあだで返すゆりちゃんVS豹変した田母神の醜い争いが始まる……!
「見返りが欲しくてやってるわけじゃないから気にしないで!」
誰もが言ったことのあるこのセリフ、極限まで追いつめられた状況でも言えるでしょうか?
この作品の嫌なポイントは、「こんな奴いるわ~!」となるリアルな人物描写です。
なぜか陰口を本人に伝える人、うまくいった瞬間に手のひらを返す人、中身が無さそうな軽薄な人……。
めちゃくちゃ嫌な奴らだけど、状況によっては自分がそうならないとも限らないのがさらに怖いところ。
「リアルな嫌さ」と徐々に手遅れになっていくストーリーがゆっくりと、確実に心を押しつぶしていきます。
ただ一言「ありがとう」だけでよかったのにね……
『神は見返りを求める』をサブスクで見る
不器用すぎる元ヤクザの社会復帰記録【すばらしき世界】
人生のほとんどの時間を刑務所で過ごした元ヤクザの男・三上。
小説家志望の津乃田は、元上司のテレビ局員・吉沢と共に、三上の社会復帰を追うドキュメンタリー番組を作ることに。
母を知らない三上は、人探しの番組で母を探してもらうことを条件に取材を受けます。
最初はおびえていた津乃田でしたが、三上は思っているよりもずっと素直で正義感の強い人間でした。
不器用ながらもまっすぐな性格で、自分の信条に反することを許せないためにトラブルを引き起こしてしまう三上。
果たして、三上は社会復帰を果たすことができるのか?
有名人の過去の経歴や行いから、炎上してしまうことがよくあります。
三上は社会復帰に努めますが、元ヤクザという経歴から何度も壁にぶつかってしまいます。
一度失敗したら立ち直ることを許さないこの世界。
いじめや差別など、問題だらけのこの世界。
三上が自分の信条を曲げてまで溶け込もうとした「普通の人たち」の世界は、本当にすばらしいものでしょうか?
現代社会の歪みを鋭く突きながらも心温まる作品です。
三上、本当にそれでよかったの?
『すばらしき世界』を見る
実際の事件をもとにした、あまりに痛ましい作品【子宮に沈める】
由紀子は、2人の小さな子供を育てる幸せな家族の母親でした。
問題はただ1つ、夫がなかなか家に帰ってこないこと。
シングルマザーになった由紀子は、2人の子供を養うために夜職に手を出します。
新しい彼氏ができた由紀子は、ある日、山盛りのチャーハンだけを残し、家に帰らなくなりました。
これは、残された3歳の少女と1歳半の乳児が餓死していくまでの凄惨な記録。
『子宮に沈める』は、ネグレクトやシングルマザーなどの社会問題を扱った作品。
この作品の秀逸な点は、小さな子供たちが残された部屋を隠しカメラのようなアングルで定点で捉えている点です。
変に感動的な音楽を差し込まず、変に映像をよく見せようともしない。
山積みのごみ袋も、ゴキブリも、ハエの羽音も、すべてがありのまま。
この作品は、映画というよりむしろ「映像記録」に近いのかもしれません。
どうなってしまっても大好きなお母さんをけなげに待ち続ける子供たちに胸が痛くなります。
目を背けたくなるけれど、絶対に見るべき作品
ある女性の、世界一悲しい喜劇的人生【嫌われ松子の一生】
ある女性が、暴行を受けて殺されてしまいました。
彼女の名前は川尻松子。
松子は昔、福岡で中学校教師をしていましたが、教え子の窃盗事件を隠しクビになってしまいます。
それが彼女の転落人生のはじまり。
様々な男性に恋をし、時には周りに手を差し伸べてもらいながら、人生の坂道を転がり落ちていきます。
松子という1人の女性の波乱の人生をポップなミュージカル調に描いたこの作品。
愉快で滑稽な雰囲気が余計に状況の残酷さを際立たせています。
人生の大事な選択肢を外し続け、激しい思い込みから軽率な行動を取る松子。
「何やってるんだ」と思いつつ、どうしても嫌いにはなれない愛おしさを感じます。
『嫌われ松子の一生』を見る
殺人犯をさがす、父をさがす【さがす】
大阪の下町で日雇い労働者の父と暮らす中学生の楓。
「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万円もらえるで」
いつもの冗談かと思い軽く流す楓でしたが、翌朝目を覚ますと父は姿を消していました。
警察に軽くあしらわれ、自分で父を探すことにした楓は、工事現場の名簿の中に父の名前を見つけます。
「お父ちゃん!」
振り返った男は、指名手配チラシで見た顔とそっくりでした。
この作品の魅力は、次にどうなるかわからないストーリー。
先の展開が読めないながらも、常に重々しい雰囲気が漂っています。
ただ父をさがすことが目的だったはずが、思いもしない方向に話が進んでいきます。
父はなぜいなくなったのか?指名手配犯との関係は?
優しさとは、正しさとは何かを考えさせられる真相も見どころです!
史上最悪の事件の真相。「凶悪」なのは誰?【凶悪】
ジャーナリストの藤井は、取材のために死刑囚の須藤に会いに行くことに。
須藤は、まだバレていない3つの殺人について自白を始めます。
「どうしても許せない奴がシャバでのうのうと生きていることが許せない」
3つの凶悪な事件の首謀者は、「先生」と呼ばれる男が首謀者となって行われたもののようです。
①殺した老人を焼却炉で燃やした
②勝手に売った土地の所有者を生き埋めにした
③借金を背負った老人に保険金をかけ、酒を飲ませて殺した
藤井は、家族の問題から目を背けるように、あまりにも残忍な事件の真相を突き止めようと調査に没頭していきます。
タイトルの通り「凶悪」な3つの事件を追っていくこの作品は、なんと実際の事件がモデルになっているんです。
老人をいたぶって殺すあまりにもむごい事件のシーンは、まるで自分も現場に居合わせているかのような居心地の悪さを感じます。
人を殺すということを何とも思っていない須藤と先生の言動に思わず背筋が凍ってしまいます……。
ところで、この作品で本当に「凶悪」なのは誰でしょうか?
凶悪な殺人事件を起こした先生と須藤?
それを追うジャーナリストの藤井?
本当に凶悪なのは、怖いもの見たさで凶悪な事件をエンタメとして消費しようとしている我々なのかもしれません。
奔放で自堕落な母、それが世界のすべてだった【MOTHER マザー】
ゆきずりの男たちと関係を持ちながらその場しのぎの生活を送る女・秋子。
理不尽に怒ったり、どんなにお金が無くても働く気が無かったり、急に家に帰ってこなくなったり……。
学校にも行かせてもらえず、友達も、他に頼れる大人もいない息子の周平にとっては、そんな母親でも世界の全てでした。
働きもせず、時には罪を犯しながら行き当たりばったりの生活を続ける2人。
限界を迎えた母子は、ついに「ある事件」を起こしてしまいます……。
子どもは、親を選ぶことができません。
親がどんな人間だったとしても、小さな子どもが頼れるのは親しかいないのです。
暴言、恫喝、犯罪の強要、子供の前での性行為……。
胸糞ポイントが盛りだくさんで、見た後にはしばらく落ち込んでしまいます……。
学校にも行かせてもらえず、母に悪口を言われ、犯罪を強要されているのにも関わらず健気に母親を愛し続ける周平。
周平がまっすぐな目で「僕、お母さんが好きなんです。何が悪いんですか?」と語るシーンに胸が痛みます……。
見ない方がいいかもしれない最悪の胸糞映画【洋画編】
もう引き返せない。愚かな差別主義者たちの末路【ソフト/クワイエット】
幼稚園教師のエミリーは、「アーリア人団結を目指す娘たち」という白人至上主義団体を立ち上げます。
はじめての集会に集まったのは、現代の多文化主義、多様性を重んじる風潮に不満を抱える4人の白人女性たち。
集会では話し足りなかった彼女たちは、エミリーの家で2次会を行うことになりました。
エミリーたちは、ワインを買うために立ち寄った食料品店でアジア人の姉妹に言いがかりをつけ、激しい口論に。
姉妹に侮辱されたことがどうしても許せないエミリーたちは、姉妹の家を荒らしに行くことにします。
最初は、いたずら半分で始めた計画でした。
しかし、家に侵入したことが姉妹にバレてしまったことがきっかけで、どんどんと行動がエスカレートしていってしまいます……。
この映画は、92分間いっさいカットを挟まない「全編ワンカット映画」です。
グラグラとしたカメラワークは、まるで自分がその場に居て、一連の事件の当事者になっているような居心地の悪さを感じます。
最初はエミリーが作ったナチスの鉤十字マークが刻まれたパイでドン引きしていたエミリー以外のメンバー。
グループ内の「ここまではセーフなんだ」のラインがどんどんエスカレートしていき歯止めが利かなくなっていくところに、集団心理の恐ろしさを感じます。
些細な隣人トラブルから始まる、最悪の嫌がらせ合戦(?)【隣の影】
妻と喧嘩して家を追い出されたアトリは、老いた母親・インガの暮らす家にしばらく身を置くことになります。
ある日、隣人のエイビョルグから「庭に生えている木のせいで日光浴ができない」と苦情が入りますが、頑固なインガはそれを拒否。
その苦情を機に、インガはエイビョルグにさまざまな言いがかりをつけるようになります。
それを受けたエイビョルグも嫌がらせで応戦。
プランターをめちゃくちゃに荒らしたり、車をパンクさせたり……。
泥沼の嫌がらせ合戦が始まります。
「ご近所トラブルから事件に発生してしまった」というニュース、たまに見ますよね。
最初は些細なことでも、ご近所トラブルは馬鹿にできない問題だったりします。
この映画の嫌なところは、嫌がらせのうちのいくつかは犯人が明かされていない点です。
もはや「嫌がらせ」の範疇に収まらないやり合いの対象は、お互いのペットにまで及びます。
嫌がらせ合戦を続けていくうちに疑心暗鬼になり、ついには取り返しのつかない事件を起こしてしまいます。
相手の嫌がらせだと思ってやり返したはずが、まさかの展開になってしまう終わり方にズーンと心が重くなってしまいます……。
急速に進化を続ける「未知の生命体」との攻防【ライフ】
宇宙ステーションの6人の乗組員たちは、火星探査機を改修するミッションを成功させました。
さっそく探査機が採取したサンプルを確認すると、なんと中には未知の生命体が。
彼らはそれをカルビンと名付け、様々な実験を行います。
急速に成長していくカルビンは知性を身につけ、ついには実験室を抜け出してしまいます。
狂暴化したカルビンはもはや制御することができず、地球に連れて帰るわけにもいきません。
乗組員たちは、無事に生き残ることができるのでしょうか……?
未知の宇宙生命体・カルビンとの闘いを描いた王道のSFサバイバルホラー。
この作品の見どころは、どうあがいても絶望しかない展開です。
良かれと思って取った対策が裏目に出て、命を犠牲にした道連れ作戦も失敗に終わり、挙句の果てには地球の本部に見捨てられてしまいます。
そしてラストには、これらの出来事を超える最悪の出来事が待っています……。
些細なモヤモヤから生じる夫婦の亀裂【フレンチアルプスで起きたこと】
あるスウェーデン人家族がフレンチアルプスの高級ホテルに滞在しています。
デッキで昼食を食べていた彼らは、遠くの雪崩がこちらに迫ってきているのを目撃します。
「ここは大丈夫だろう」と呑気に雪崩の動画を取っていた父・トマス。
徐々に勢いを増して迫ってくる雪崩にパニックになったトマスは、妻のエバと2人の子供を残して逃げ出してしまいます。
幸い誰もケガをすることはありませんでしたが、エバと2人の子どもたちはトマスに冷ややかな目線を向けます。
この些細なモヤモヤをきっかけに、楽しいはずだったバカンスが一変してしまいます……。
一度失った信頼って、なかなか取り戻せないものですよね。
家族を置き去りにして雪崩から逃げてしまったトマス。
「ビビッて逃げちゃった、ごめん!」と謝れば笑い話になったかもしれませんが、トマスは絶対に逃げたことを認めません。
正直に言ってしまうと、あらすじで紹介した以上の事件は全く起こりません。
そして、「何も起こらないこと」こそがこの作品の魅力だとも言えます。
どんなに言い訳をしても、挽回しようとしても付きまとう「でもコイツ一人で逃げたよな……」。
何も起こらないからこそ、誰でも一度は体験する嫌な気まずさが一層リアルに感じられます。
これを読んだ皆さんは、「トマスは最低な男だ!」と思うことでしょう。
でも、あなたは本当に同じようなことをしていないと言い切れるでしょうか?
そんな不安を抱えずにはいられないラストシーンも胸糞ポイントです。
「人生の残り時間」を意識し始めた男の、友情の決裂【イニシェリン島の精霊】
「お前はいいやつだ。でもつまらない。残された人生はもっと有意義なことに使いたい」
パードリックは、親友のコルムに突然絶交を言い渡されます。
納得のいかないパードリックは、来る日も来る日もコルムに話しかけ続けます。
しつこいパードリックに対し、「次話しかけたら自分の指を切り落とす」と告げるコルム。
ヴァイオリンで作曲をするコルムにとって、「指を切り落とすこと」は残りの人生を無駄にすることと同じ。
そんなことはしないだろうとコルムに絡み続けるパードリックですが、ある日、家の扉に何かが当たる音が。
外に出てみると、切り落とされた指が転がっていました。
1920年代、内戦中のアイルランドに浮かぶイニシェリン島は、平和でありながらどこか陰鬱な空気が漂っています。
娯楽と言えば、パブで酒を飲むことと誰かのうわさ話だけ。
コルムは、残りの人生で意味のあることをしようと親友に絶交を切り出します。
なかなか納得してくれない(できるわけないですが)パードリックは関係を修復しようと必死。
2人の意地の張り合いは、だんだんと部外者には理解できない過激なものになっていきます。
退屈な島、性格が良いとは言えない島民たち、もう戻れない2人……。
作品を通して漂う陰鬱で嫌な雰囲気に心がズーンと重くなってしまいます。
幸せな家族を襲う、理不尽な暴力【ファニーゲーム】
別荘でひと夏を過ごそうと、ショーバー一家は車を走らせています。
別荘で夕食の準備をしていると、白シャツに白半ズボン、白い手袋をした2人組の男が「卵を分けて欲しい」と家を訪ねてきました。
最初は快く受け入れた妻でしたが、男たちはわざと卵を割り、何度も新しいものを貰おうとします。
しびれを切らした夫・ゲオルグが男に平手打ちをすると、もう片方の男にゴルフクラブで足を殴られてしまいます。
身動きが取れなくなったゲオルグを人質に取った男たちは、家族を軟禁し始めます。
何も悪いことをしていない善良な家族が、理由もなく痛めつけられる。
ストーリーとしてはただそれだけ、でも「ただそれだけ」というのがこの作品の胸糞ポイントです。
男たちが一家をいたぶるのに、理由なんてありません。
ただ、ゲームのように人をいたぶりたいだけなのです。
数々の残酷な仕打ちはもちろんのこと、神経を逆なでするような言動にもイライラが募ります。
また、この作品の面白い点として、2人の男たちはこちら側、つまりこの映画を見ている我々に向かって話しかけてきます。
「あなたたちは彼らに勝ってほしいんでしょ?」
一度は男たちに反撃する一家でしたが、映画の常識を覆すようなまさかの方法で「反撃をなかったことに」してしまいます。
この作品を見る際には、ぜひこういったメタ的な演出にも注目してみてください。
2人の世界に押し入ってくる、愚かな人々たち【マザー!】
緑豊かな郊外の家で暮らす夫婦。
詩人である夫は長い間スランプに陥っていましたが、妻の献身的な支えにより穏やかな生活を送っていました。
ある日、夫のファンであるという見知らぬ男性がやってきました。
泊まる場所がないという男性を、気のいい夫は快く受け入れてしまいます。
男性を受け入れたことをきっかけに、次から次へと見知らぬ人が家を訪れるようになります。
自分の家のように好き勝手にふるまう彼らに、妻は我慢の限界を迎えてしまいます……。
この作品の嫌なところは、パーソナルスペースが侵害される不快感を受け続ける点です。
夫のファンだという男性をはじめとして、その妻、息子兄弟、最終的には数えきれないくらいの人が家で好き勝手過ごし始めます。
この作品、何も知らずに見たら、支離滅裂な展開で混乱してしまうかもしれません。
実は、この作品は旧約聖書の「創世記」がモチーフになっているんです。
夫は神、妻は母なる大地である地球、我が物顔で家(世界)を踏み荒らす人々たちは人間ということですね。
物語終盤、妻が子供を出産したことを知った人々は、とんでもないことをしてしまいます……!
衝撃すぎるこのシーンから、日本では公開禁止になったようなので、ショッキングなシーンが苦手な方は注意してください。
中世フランスでのある事件をめぐる、3人それぞれの真実【最後の決闘裁判】
14世紀のフランス、騎士カルージュの妻マルグリットは、夫の旧友ル・グリに強姦されたことを告発します。
その事件には目撃者がおらず、ル・グリは無罪を主張しました。
カルージュとル・グリは、己の名誉をかけて決闘裁判を行うこととなります。
真相不明なこの事件に、三者それぞれの視点から迫っていきます。
14世紀に実際に起こった強姦事件がモデルのこの作品。
いまだに真相がわからないこの事件を、カルージュ、ル・グリ、マルグリットそれぞれの視点から見ていく構成となっています。
真相不明のこの事件の判決は、最終的にカルージュとル・グリの決闘で決められます。
この決闘、決して「己のプライドのために」とか「愛する妻のために」のようなかっこいいものではありません。
「真実」というものは、それぞれの視点や認識のずれによって簡単にゆがめられてしまいます。
現代にも言えることですが、この時代の女性は悔しい思いをすることも多かっただろうと思います。
男が「女のために」良かれと思ってやっていることが単なるエゴであるというグロテスクな事実を浮き彫りにする作品です。
何度繰り返しても変わらぬ世界【隔たる世界の2人】
黒人のカーターは、恋人の部屋で目を覚まします。
家で待つ愛犬にエサをやるために自宅に帰る途中、「タバコの匂いがおかしい」と白人警官に言いがかりをつけられてしまいます。
無理やり手荷物検査をしようとする警官に抵抗したカーターは、警官の無理な拘束で窒息死。
次の瞬間、恋人の部屋で目を覚ましたカーターは、世界がループしていることに気づきます。
カーターは、白人警官に殺されてしまうループを脱して、家に帰ることができるのか……?
罪のない黒人が白人の警官に殺されてしまう事件は後を絶ちません。
実は、この映画は実際に起きた事件がモデルになっています。
長い歴史の中で、何度も人種差別をなくそうとする動きがありましたが、依然として人種差別は根強く残っています。
何度行動を起こしても変わらない現実をループで表現したこの作品。
非常にポップな雰囲気でありながら、現実世界の歪みについて考えさせられてしまう力強さがあります。
『隔たる世界の2人』をサブスクで見る
第二次世界大戦下のドイツ、フェンスの向こうのお友達【縞模様のパジャマの少年】
軍人である父親の都合で見知らぬ地に引っ越すことになった少年・ブルーノは、遊び相手もおらず退屈な日々を過ごしていました。
ある日、家から抜け出したブルーノは、少し離れたところに農場のような施設を見つけます。
実はフェンスの中のこの施設はユダヤ人の強制収容所で、シュムエルはユダヤ人でした。
フェンスの中にいる縞模様のパジャマを着た少年・シュムエルとブルーノは、次第に友情をはぐくんでいきます。
2人の純粋な友情は、凄惨な悲劇を巻き起こしてしまいます。
戦争中だとか、劣った人種だとかは大人の都合であり、純粋な子どもにはそんなことは関係ありません。
純粋な子どもの目線から、戦争の愚かさを描いたこの作品。
大人の都合など全く知らないブルーノの優しさからの行動が、最悪の事態を引き起こしてしまいます。
残酷なシーンはそれほど多くありませんが、胸が締め付けられるほどの悲痛があなたを襲うこと間違いありません。
『縞模様のパジャマの少年』を見る
偏見に、差別に、幸せが奪われる【チョコレートドーナツ】
舞台は今よりもずっと同性愛者への偏見が強かった1979年のカリフォルニア。
ショーパブの歌手であるルディと検事官のポールはゲイの恋人同士です。
ある日、ルディはアパートの隣に住んでいるダウン症の少年・マルコの母親がドラッグの所持で逮捕されたことを知ります。
マルコを気の毒に思った2人はゲイの恋人同士であることは伏せ、法的手続きをとってマルコの監視者となります。
愛情深くマルコを育てる2人は、幸せな時間を過ごします。
その間にマルコは学校に通い始め、文字を覚え、歌も歌えるようになりました。
しかし、幸せはそう長くは続きません。
ルディとポールはゲイの恋人同士であると家庭局に通報されてしまい、マルコと引き離されてしまいます。
幸せな日々を取り戻すため、2人は裁判を起こすこととなります……。
偏見と法の逆風を受けながら幸せを掴もうとする2人の葛藤と戦いを描いたこの作品。
3人と関わる身近な人たちは、口をそろえて「3人はいい家族だ」と言います。
しかし、全くの他人にとっては、差別の対象である人間がウソをついているようにしか見えていないようです。
2人を非難する人々は皆、「正しいから」ではなく「自分が気に食わないから」言いがかりをつけているように見えます。
正しさとは、本当の幸せとは何かを考えさせられるラストに胸が痛くなります……。
現在でも、性的マイノリティへの方々への差別や偏見は無くなっていません。
この作品をみると、差別や偏見は絶対にあってはならないと強く感じます。
『チョコレートドーナツ』を見る
元気な時に見てね
おすすめの胸糞映画を18作品紹介しました。
まとめた後に気づきましたが、胸糞映画って実際の事件や出来事をモデルにしたものが多いんですよね。
もしかしたら、フィクションよりもリアルの方がよっぽど胸糞なのかもしれません……。
今回紹介した作品は、僕が見た後に数日間はその映画のことしか考えられないくらい引きずってしまったものばかり。
胸糞映画って普通にメンタルに良くないらしいので、見るなら元気な時にしましょうね……。